友よ 友だちよ

友よ 友だちよ
中野鈴子

わたしは 三度目の開腹手術を受けるために
行ってきます

友よ
手術をしなければならぬということは
命があるということです

いろいろの
心のキズを耐え
力あつめて立ちつづけてきた
体に三度目のメスを受けねばならぬ

黄色い目じりから泪がにじんで流れようとする
友よ
手術をしなければならぬということは
命があるということです

命がなければ 誰の顔も見えなくなるではないか

誰も わたしをもう見ることができないではないか

命がなければ もう詩が書けないではないか

命がなければ 体も心も灰になってしまうではないか



青空文庫より引用